絵葉書にみる日向市の風景<1>富高新町、伊勢ケ浜(戦前;概ね昭和初期)

①「富高町」:昭和初頭、おそらくS10年頃の写真で、繁華街「富高新町」(とみたかしんまち)を写したもの。どの図録にも必ず登場する有名な写真。本町から塩見橋(南方向)を望む一枚であり、手前は本町、途中より奥は中町となる。

向かって右の「内山金物店」はS40年代頃までこの角(カド)に存在し、のち児童公園付近へ移動。南隣にある「吉田文具店」はT13年(1924)創業の老舗で、この写真が撮られてから間もなく対面(斜め向かい)の角地に移動し、R3年(2021)頃まで永らく営業した。

そのさらに南隣「金丸書店(かなまるしょてん)」は、T10年頃から営業していたといわれ、S20年代頃まではこの本町にあり(当時は新町大通りにあった「勉強堂」の向かい)、その後は上町に移転し、異業種に転換して営業を継続した。この書店で「少年画報」や「譚海(たんかい)」といった児童向け漫画雑誌が販売されていた。またこの店は新聞販売店でもあった。建物に掲げてある看板には「大阪朝日新聞販売店」と書かれてあり、戦前当時は日向日日新聞(現・宮日)や大阪毎日新聞(毎日新聞の西日本版)などと共に流通していた。大阪朝日新聞はS15年に現在の「朝日新聞」名に改称していることから、本素材はそれ以前の撮影ということがわかる。また絵葉書タイトルが「富高町」であるため、町名が「富島町」へ変わるS12年以前に撮影および発行されたことも想像できる。そのほか、この店では絵葉書の制作・販売も行っていた模様。(※隣の吉田文具店でも昭和8年頃から絵葉書の制作・販売を手掛けており、この写真もその文具店制作の1枚である。)

なお、向かって左手前にある電信柱の、左脇に黒く写っている2本の柱は「富高小学校」正門の門柱であり、昭和30年に草場に移転するまではここが小学校の入り口だった。

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②「富高町伊勢ケ濱」③「富高町伊勢ケ濱海水浴場」:②と③は伊勢ケ浜を写したもの。いずれも吉田文具店発行の絵葉書であることから、上記①とほぼ同時期に撮影されたと思料される。<蛇足:富高村から「富高町」となったのがT10年、細島との合併で富島町となったのがS12年であるため、これらの写真はそのあいだに撮影されたと思われる。>

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<注>M:明治、T:大正、S:昭和、H:平成、R:令和。

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